「安全・安心」に向き合う企業の「価値観」を変えていく
~データ解析のプロフェッショナル「セーフティ・ソリューションズユニット」が拓く未来とは〜
2021.12.24
読み終わるまで:3分
設備の老朽化によってプラントの爆発・火災事故が多発
化学工場の爆発や高圧ガスによる火災など、プラント設備の事故の頻発が今や社会問題のひとつになっている。その理由として、機器の誤操作や誤判断などの人的リスクに起因するものよりも、設備の維持管理の不良による事故の比重が増えているという。つまり、設備の老朽化にともなう火災や爆発が数多く発生しているのだ。
こうした工場設備の安全対策は効果測定が見えづらく、企業にとっても投資の優先順位が低いため、自社による整備が進みにくい側面がある。だからこそ損害保険会社がイニシアチブを取り、従来の保険機能に留まらない、安全に資する価値提供を積極的に行っていくことは損害保険会社の重要な社会的使命になるだろう。
三井住友海上では数年前から「RisTech(リステック)」というデータサービス開始している。RisTechとは、自社のデータサイエンティストが社内外のデータを駆使して企業のリスク分析を行い、問題の解決へと導くことが主な役割。そのサービスを提供するために新設された、「セーフティ・ソリューションズユニット」の仕事がいま興味深い。
同チームのミッションは、事故を減らすという保険会社の重要な使命を深堀り、膨大なデータを活用することで、石油化学プラントなどの工場において、火災や爆発事故などの発生確率を減らしていくことにある。
具体的には、防災・減災に資するデータ分析とコンサルティングを実施し、パートナー企業群と協働しながら、リスク評価と事故防止策の実行まで支援すること。化学プラントや石油プラントの機器や設備について、過去1年に流入した原料の量や種類などの様々な蓄積データを受け取り、分析や解析によって生産プロセスの異常を発見するものだ。
データ解析で終わるのではなく、課題解決の方法までを提案
世の中の工場や生産プラントにおいて、データを活用することによって事故発生のリスク要素を減らしていく。そうしたセーフティ・ソリューションズユニットの活動は人命を守り、安全性を高めるとともに、企業や社会における「安心・安全に対する価値観」を引き上げることにもつながっていくはずだ。
ここで大切なことは、同チームの取り組みは、事故のリスク回避はもちろんのこと、顕在化する課題に対しての具体的なソリューションを提供できるビジネスであることだ。単なる分析や机上の空論にとどまらず、必要な機器の導入などハード・ソフト両面から具体的な対策を提供する。データ解析をベースに、具体的な課題解決までを行うことで、いっそうの付加価値を生み出しているのである。チームのメンバーである伊藤さんは「これで安全・安心のリスクが減った、とお客様から評価してもらえること。それが私たちの目指すプロセスの第一歩であり、その価値をお客様に認めていただくことが最初の到達点だと思っています」と話す。単にデータ解析で終わるのではなく、現場に即した課題解決の方法までを提示する。それが三井住友海上のデータサイエンティストが重視する意義であり、他の損保会社がまだ十分には踏み込んでいない領域でもある。
同チームの責任者でもある、上田さんは言う。「今までにないもの、何もないところに道を切り拓いていくのは面白いし、ワクワクする。試行錯誤とトライ&エラーを重ねながら新たな仕組みを作り、そこに社会的な価値を生み出せるのはとても楽しい仕事です」
工場での事故は、現場の士気を下げるのはもちろん、人命にも関わる重大な結果を生んでしまう。日本を支えるものづくりにおける生産性を下げ、グローバル競争力の低下要因ともなるものだ。日本のものづくりを支える次なるイノベーションに、いま三井住友海上は果敢にチャレンジしている。
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