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【核心】脱炭素社会は脱リスクから推進する

~リスクを背負う人を救うこと~

2021.11.11

読み終わるまで:3分

脱炭素社会の実現に向けた、国を挙げての取り組み

今や台風のニュースを5月や6月に聞くことも、それほど珍しいことではなくなった。台風や豪雨、地震などの災害はもはや1年を通じて発生し、土砂崩れや住宅浸水に見舞われたまちの様子をテレビで見ながら、行き場のないやりきれなさに心沈む人は少なくないだろう。

こうした災害がもたらすリスクが、いま日本が国を挙げて進めている「脱炭素(カーボンニュートラル)」にも影響を与えていることを、あなたは知っているだろうか?

近い将来の脱炭素社会の実現に向けて、「グリーン電力証書システム」という取り組みが今推進されている。グリーン電力とは、風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの自然エネルギーで発電された電力のことで、石油や石炭などの化石燃料による発電と違い、発電するときにCO2を発生させないメリットがある。

このグリーン電力は、電気そのものの価値に加え、省エネルギーやCO2排出抑制といった「環境価値」を有するものだ。一般の企業や自治体はグリーン電力の発電設備を自ら持たないが、この環境価値を「グリーン電力証書」という形で購入することで、グリーン電力を使用しているとみなされる。つまり「グリーン電力証書」を購入し、通常使っている電気と組み合わせることで、環境にやさしいグリーン電力を使用していると認められるわけだ。

脱炭素社会の実現に向けた、国を挙げての取り組み

環境に貢献しない企業は、もはや競争には勝ち残れない

なぜ、企業はそんな努力をする必要があるのか。裏側にあるのは、今やあらゆる企業は、環境問題への取り組みを市場でのアピールにつなげていくことが欠かせないという点だ。脱炭素社会への貢献を果たさなければ、ステークホルダーの共感を得ることはできず、グローバル競争で歯が立たないという世界的なトレンドがある。その中で、「グリーン電力証書」を取得すれば、証書に記載された電力量相当分の自然エネルギーの普及に貢献したことになるのだ。

こうした脱炭素社会の実現に欠かせない自然エネルギーの発電設備が、近年の災害による破損が原因となって、稼働停止に追い込まれる状況が増えている。

記憶に新しいところでは、2020年7月の台風9・10号によって、九州各地を中心に再生可能エネルギー発電設備の事故が相次いで発生した。また前年の台風15号では、千葉県市原市で太陽電池発電設備が破損。頻発する災害によって各地の自然エネルギーの発電設備が深刻な被害を受け、稼働停止に追い込まれるという事実がある。設備破損で発電自体ができなくなることに加え、「グリーン電力証書」を取得して事業を進めるはずの企業が、それを妨げられる新たなリスクに直面している状況があるわけだ。

環境に貢献しない企業は、もはや競争には勝ち残れない

価値ある未来の創造を後押しする保険の役割

そうした状況を背景に、三井住友海上火災保険は2021年4月、「グリーン電力証書安定供給支援保険」の販売開始を発表した。「グリーン電力証書」を取得しようとする企業などを対象に、委託しているグリーン電力の発電施設が災害などのトラブルで稼働停止となった際に、他の施設等から調達することで生じる追加費用を補償するものだ。

つまり、対象の発電施設において、自然災害による損壊によって操業停止などのトラブルが生じ、企業が「環境価値」を調達できなくなった場合に、代わりの発電施設からグリーン電力を調達することで生じる追加費用をまかなう保険である。

私たちが暮らす日本は、世界でも自然災害が特に多い国であるのは確かなところだ。たとえば地震は、日本の国土の広さは全世界の1%にも満たないにも関わらず、世界の地震の2割は日本で発生。自然災害による被害額も、なんと全世界の2割以上を日本が占めている。

こうした国に暮らすなかで、保険が果たす役割は、「リスクを背負う人を救うこと」。災害というリスクから人や企業を守り、価値ある未来の創造を後押しするのが保険の役目でもある。脱炭素に向かう企業を裏側から支える保険は、カーボンニュートラルを目指す社会を助ける、確かな一翼を担っていると言っていいだろう。

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URAYOMI

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